メディカルセミナーズ blog

高齢者看護&介護について、東京・大阪・愛知・福岡で看護師向けのセミナーを開催しているメディカルセミナーズです。褥瘡・胃瘻・認知症・フットケア・創傷管理・口腔ケア・ストーマなど各テーマのセミナーの情報や、参加者の感想などを紹介しています。

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林炎子先生の「認知症の認識を知ろう」

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(写真:林もえこ先生)

 みなさんこんにちは!

認知症介護歴28年の
看護師 林もえこです。


「うちのおじいちゃん、
 この前オレオレ詐欺に
 騙されそうになっちゃって」

そうやって、Aさんは笑いながら
話してくれました。

振り込まないで済んだから笑い話に
なったのですがσ(^_^;)

どんな内容かというと…

振り込め詐欺から電話がかかってきて
「太郎か?」(孫の名前)
と言ってしまった。

声がおかしいのは
体調が悪いせいだと言う事、
お金が必要だと言う事を
信じてしまった。

振り込もうと思ったけど、
ATMの操作が
わからないのと、
混んでいたので
諦めて、お嫁さん(Aさん)に
お願いした。

Aさんは、
振り込め詐欺だとわかったので
振り込まないで済んだ。

こういう事だったようです。

しかも、おじいちゃんは
孫と同居していて、
孫は2階の自室にいたのです。

おじいちゃんは、
孫の部屋の前に
「体調が悪いなら
 病院に行きな」と
メモを置いたそうで、
それを見たお孫さんは「???」
そりゃそうですよね。

笑っちゃうような話で、
なんで、一緒に住んでいるのに
確かめなかったの?など、
突っ込みどころ満載ですが、
(Aさんも笑いながら
 突っ込んでいました。)

なんでこんな事が起こるのでしょう?


「ワーキングメモリの障害」


高齢になったり、
認知症になると、
ワーキングメモリが
障害されます。

ワーキングメモリとは、
頭の中にある
タッパーのようなものです。

タッパーって容量が
限られていますよね。
それと同じで、
入れられる記憶や
情報の量も限られています。

その容量を超えると
わからなくなってしまいます。

正常であれば、
「おれだけど」と
電話口で言われて
「おれ」という情報が
タッパーに入る。

そこで「おれ」という相手が
誰なのかを判断します。

そこで「おれ」っていう人間は
知らないってなります。

なぜなら、皆さんも、
親に電話をかける時に
「おれだけど」「私だけど」って
かけないですよね?

「あ、お母さん?」といって
要件を話し始めます。

子供が自分に電話を
してくるときもそうです。

うちの子は「ママ~」と電話してきます。

そこで、判断できるのです。

「おれ」っていう人は、変だな?
子供や孫じゃないなとなります。

そこで、相手が
「携帯の番号が変わった」
「風邪をひいた」
と言っても、
理にかなっていないことがわかる。

だから、

「携帯電話の番号が変わった」

「風邪をひいたから声がおかしい」

という情報を捨てて、
新しい情報、

「そういえばオレオレ詐欺って
 こんな手口だったわ」

「娘が気をつけてって
 言っていた」

という情報を
タッパーに入れることが
できるから騙されないのです。

ところが、高齢になったり、
認知症になったりすると
このタッパーの容量が
極端に少なくなります。

そして、形も細く深くなると
想像してください。

平べったい形から、
筒状になります。
筒状になると、最初に入れた
情報を捨てるのが
難しくなります。

「おれだよ、おれ」と言われた時に
「おれ」の情報、すなわち
子供や孫のことを想像してしまうと
それだけでタッパーがいっぱいに
なってしまうのです。

「風邪をひいた」
「携帯の番号が変わった」
「事故を起こしてお金が必要」と

はたから見たら、
理にかなってなくても
もうタッパーから、
その情報を出して
”これはオレオレ詐欺だ”
という情報を
入れることが
できなくなってしまう。

だから、信じてしまうのです。

正しい判断が
できなくなってしまうのです。

Aさんのおじいちゃんも、
タッパーがいっぱいになったから、
一緒に住んでいる孫に
確認もしないで
ATMに向かったのです。

認知症があって、
ワーキングメモリが
崩壊していても、

「おれだよ」「太郎か?」
「事故を起こしたんだよ」
「何の事故だ?」などと

答えることができるし、お金を
引き出す能力もある。

だから、オレオレ詐欺に騙される人が
あとをたたないのです。

騙されないようにするのは、
難しいのです。

大きいお金を使えないようにした方が
よっぽど被害に遭いません。

一回騙されかかったので、その後も
詐欺の電話がかかってくるそうで、
Aさんもそれからは、通帳の管理は
おじいさんではなく、
Aさんにしたそうです。

「引き出せるお金がなかったら、
騙されて払わないで済むから」
そう言っていました。

今日は、ワーキングメモリの障害について
お伝えいたしました。

本日もお読みいただいて
ありがとうございました。


林 もえこ



◆ 林 炎子 (はやし もえこ)
プロフィール

看護師。1975年生まれ。

11歳のときに両親が民間福祉施設
(デイサービス・入居サービス)を開設後、
幼児、障碍児、障害者、高齢者、
認知症高齢者と生活を共にし、
28年間で70名以上の認知症の方の、
初期から寝たきりになるまで深く関わる。

また、看護師としても、
都立病院などで
10年以上の勤務を経験した後、
2011年 地域での認知症高齢者と
家族のサポートをするため、
心理学、ヒプノセラピー、
NLP、医療・看護など、
多くの学びから得た
エッセンスを活用しながら
認知症に特化した
デイサービスを開設。

28年間実践し続けてきた
独自の介護メソッドを分析し、
認知症とその家族のための
ケアを開発、提供している。


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